つののありか

悔やまない後の祭り

【小説】「ブランケット・キャッツ」重松清

 

ふらり、と猫の御手を借りて

 

◯花粉症のブランケット・キャット

 

初っ端から出てくる人々の事情が重い。子供が欲しくてもそれが無理である…と。きっついな。

夫婦のあり方って難しい。子供がいたら〝家族″というカテゴリー化も簡単だけど、夫婦は〝家族″なのかな。結婚したらもう〝家族″?いつから〝家族″になるんだろう。

店員にちくっとイヤミを言っちゃうところとか好き。さりげない八つ当たりとかしちゃうよね。

アンがぶち壊したおかげで何かが修復された。ぐちゃぐちゃにしたのにまとまるのってなんだか不思議。でも、とてもしっくりくる。

 

◯助手席に座るブランケット・キャット

 

またもやワケあり。恋愛をいっぱい拗らせると、崩れてしまうんですかね。

自問自答が黒猫の魔法、幻覚を通して表現されているのが面白かった。

たえ子さんが「ひとに迷惑かけちゃいけないよね」と言った時にクロがうなり声をあげたシーンが印象的。

許されたいし、責められたいし、励まされたいし、叱られたいし、泣いてほしいし、笑ってほしい。

一筋縄ではいかない感情が溢れていた。

彼女はほんとうに「ふしあわせ」だったのでしょうか。

 

◯尻尾のないブランケット・キャット

 

重松さんはいじめを題材としたお話を書くのがすごく上手いと思う。今回はいじめる側のお話。

父親と息子の気持ちがすれ違ってしまっているのが、ひたすらに悲しい。そりゃあ、息子が人をいじめてるだなんて考えないよなぁ…。決して悪いお父さんではないから、今回の一件で少し考え方が変わって、コウジくんも生きやすくなるのでは。親の期待ってエグいもんね。

その場限りの謝罪というのがリアルだった。ほんとうに謝れる時が来たら幸せではあるよね。謝りたくても謝らない時だってあるからね。

店員さんが洒落てる。そういうこと、さらっと言える人、かっこよすぎでしょ。

 

◯身代わりのブランケット・キャット 

 

まさに〝家族″になる前触れのお話。

ボケても猫のことはちゃんと覚えているおばあちゃん。どんなに大事な人でも忘れちゃう時は忘れちゃうからどうしようもないよね。

しっかり喧嘩しろよっていうおばあちゃん、深いですね。好きだけど、結婚というとその先のイメージが掴めなくて、連絡を取ることすら億劫になってしまっていた二人には響いたであろう。

言いたいことも言えない間柄じゃ、長くは続かないとよく分かった。 

終わり方的に二人は夫婦になるのかな。別れるにしても、思ってることちゃんと言い合って、後腐れないような選択をしてほしい。

 

◯嫌われ者のブランケット・キャット 

 

主人公やパートナーが前向きなだけで、一見明るいが割とお先やや真っ暗な状況。お金がピンチでもあまり揉めてないからいいのかな。

大家さんは厳しい態度を取っているけど、誰かに真意を分かってもらいたかったんじゃないだろうか。そこにズケズケと入り込んでくる若者、たまには図々しさも必要だね。

本気になりきれなくて、はぐらかしちゃうっていうのはすごく分かる。怒られてる時とか神妙な面持ちをするの、めっちゃ苦手。

最後、大家さんがデレるところは素敵。その優しさに主人公とともに涙する。

 

 

◯旅に出たブランケット・キャット 

 

まさかの猫目線。

お姉さんが可哀想だった。あの後どうなっちゃったんだろう。責任問われたりすんのかなぁ。

ほんとに、かしこいんだな。ギャグみたいに頭がいい。空気も読めるし。絶対、私も含めてそこらの人間よりできた奴じゃん。

新しいお母さん、優しい人で良かった。これからが大事になってくる家族。

飼われないところがらしいというか、タビーさんまじかっけーっす。

 

◯我が家の夢のブランケット・キャット

 

リストラかぁ…とことん、重い。自分の過失じゃないから、責めようがないし。何か決定的に悪いものがあればちょっとは楽になれるのに。

美雪ちゃんの気持ちは痛いぐらい伝わってくるけど、みんながみんな辛いからなあ。

訪問して来た一家の無神経さやら、美雪ちゃんと殺伐としている友達?のクソ発言やら、抉ってきますよね。

思い出は自然とできるものなのか、それとも作るものなのか。〝家族″と似たものを感じる。

春恵さんの綺麗事ではない覚悟が、すさまじかった。しょうがない、じゃあ済まないことかもしれないけれど、この状況、この家族においては一番理にかなった言葉だったんだろう。

最後に美雪ちゃんが言った「まあ、体が元気だったら、それでいいんだけど」という言葉は〝家族″を体現している。何はともあれ、元気でいてくれたらいいのだ。単純であれ、家族。

 

短編小説の感想というものは、どうしても簡潔になりがちである。一個一個読んだ直後、感想を書けばいい話なのだが、読書中に他のことをするのはいただけない。

 

7つのお話が詰まった短編集。それぞれのキャットを合わせてブランケット・キャッツ。レンタル猫を通して様々な人間模様が描かれている。

ほとんどのお話がどうしようもなくシリアスだけど、最後に希望が垣間見れるステキな作品ばかり。

ネコに触れたくなる。私は猫アレルギーなんですけれども。

読了後、どんな人でも猫に会いたくなるし、暗さの中の明るさをすうっと感じられると思う。